2016-01-01から1年間の記事一覧

デセールはクライマックスでなければならない

もう我慢できないから書かせてくれ。デセールはクライマックスであるべきだ。食後のおまけではない。輝かしいフィナーレ、物語の最高潮であるべきだ。 わたしは常日頃から、フレンチのコースと文学作品は同じようなもんだと思っている。 まず、席につくと何…

高い本を買えるようになった話

欲しかったけれど、値段が高いという理由で購入を諦めてきた本がたくさんある。 少ないお小遣いの中で、せいぜい文庫本を数冊買うので精一杯だった中高生のわたしにとっては、2万円の『幻想文学大事典』なんかとてもとても買えなかった。そうして諦めてきた…

レストランに行った話

先日、クーカーニョというレストランに行った。渋谷のセルリアンタワーの最上階にあるフレンチレストランだ。永妻シェフのプロヴァンス料理がいただける。かつてはミシュランガイドに一つ星がついたこともあるらしい。ドレスコードがあるし、良いお店なんだ…

ものを書くことについて

なんの躊躇いもなく「ものを書くことが好きだ」と言える人がすごく羨ましい。 というのも、わたしにとってものを書くという行為は常に苦痛を孕んでいるから。 わたしにとってものを書くということはただの自傷行為でしかない。 己の心奥を己の手で深く抉るこ…

香水の寓話

硝子細工の香水壜をなんとなく手に取ってみた。冷たい蓋をそっと外してみると、華奢な少女がわたしの前に現れた。彼女の絹のように滑らかな亜麻色の美しい髪が揺れると、仄かに牡丹の花の香りが立つ。磁器を思わせるような白くなめらかな肌は、わたしが手を…

夢の話

うだるような暑さと倦怠に疲弊しきった体躯遮光幕から射し込むは一筋の月明かり水を張った静けさと規則的な呼吸の音己の頬に触れる優しい手指誰のものでもない過去への意識の介入は可能か鍵盤の旋律に想いを馳せる芳香な紫煙がゆるりと揺れる一角獣の誕生に…

デザートの極点を見た話

こんなにもスイーツに感動したのは生まれて初めてかもしれない。港区に期間限定で出しているお店でデセールのコースを食べてきた。デザートが6皿出てくるという女子垂涎モノのコース。 わたしは今までいろいろなパティスリーでケーキを食べてきたし、それな…